Android TVがYouTuberのコンテンツ作りに与える影響について考えてみた

先日山本一郎氏のこんなエントリーが話題になった。

YouTuberが儲からなくて大変らしいですね

この人の意見は基本話半分程度に読んでいるが、所々示唆に富むというか、考えさせられる部分があるのでつい読んでしまう。例えばこの部分。

数十年前のテレビの時代であれば子供が好きなタレントを起用して広告を流せば家族全員がそれを見るので何も問題なかったのに、今は家族揃ってテレビを見ることはなく、個々人がそれぞれスマホやPCを使って各自の好きなものしか見ない状況となることで、広告についてもよりターゲティングの精度を上げていくことが求められる時代になった

確かに、TVであればどんなCMを流していても、家族で見ていれば誰かしらにヒットしただろう。対してYouTubeの場合は、おそらくスマホやPCで小学生などが一人で見ているケースが多いと考えられるので、彼ら彼女らに髭剃りのCMを流しても仕方ないというのはよくわかる。

とはいえ、実際問題TVだってドラえもんやクレヨンしんちゃんの放送中に流れるCMはおもちゃのCMが中心なわけで、全くターゲティングされていないわけではない。また、YouTubeは視聴者の年齢、性別、国などがデータとして取れるので、Googleもおそらく小学生のアカウントには小学生向けの広告を流していると思われるが、どうなのだろうか?知り合いに小学生がいないので分からないが。YouTubeの広告ターゲティングのまずさを指摘するのに、山本氏のようにYamahaの発動機にHIKAKINを起用した云々のみを挙げるのは不十分で、小学生のアカウントでログインしたら、どういったCMが流れるかも検証したいところ。

それはさておき、私が今日書きたいのは「家族でTV」から「一人でスマホ」へという細分化現象に抗う動きが今出ており、それが所謂YouTuberのコンテンツ作りにどういった影響を与えるかに関してだ。

「一人でスマホ」に抗う動きとして私が注目しているのが、Googleが普及させようとしているAndroid TVだ。Android TVとは、一言でいえばTVでYouTubeやHulu等の各種動画配信サービス、Android対応のアプリやゲームなどを楽しむことが出来る仕組みといったところだ。

私は以前こんなツイートをした。

 

Android TVは、おそらくネット動画の大衆化に大きな影響を与えるのではないかと私は予想している。これまではYouTubeやHuluなどのネット動画は一人で見ることが多かったと思うが、Android TVが普及した世界では、そうした状況は一変し、家族でYouTubeを見たり、Huluの映画を見たりという光景が当たり前になる。そこでは従来の地上波放送は、

「テレビも1つのアプリのように扱えるというイメージ」(via 初のAndroid TV「Nexus Player」が2月下旬発売。12,800円。各社TVやHuluも 記事中のGoogle Play アジア太平洋地域統括副社長のクリス・ヤーガ氏の発言)

であり、YouTubeなどのネット動画と対等な立ち位置になるのだ。

このようにYouTubeが地上波と対等な地位を確保した果てに待っているのが、YouTuberのお茶の間進出現象だ。我々は、今後自分の息子や娘と一緒に、HIKAKINを見なければいけなくなるかもしれない。逆に、子供たちは親が見ているガジェットレビュー動画を一緒に見なければいけなくなるかもしれないのだ。

HIKAKINはこうした将来を見据えてか、あるインタビューでこんな発言をしている。

僕のファンって小学生や中学生がメインで、すごく若いんですよ。だから、だんだん自分の年とファン層の年が離れていくので、そこは意識していかないとな、と思っています。なので、コンテンツの題材としてアルコール類はやっていません。家族みんなでご飯を食べながらでも見ることのできるコンテンツをやっていきたいと思っているので、下ネタも言いません。お母さんが見て「こんなの子どもに見せたくないわよ」って思わない動画をやっていきたいんです。(via 目指すは中高生の身近なヒーロー)

このHIKAKINの発言がAndroid TVのことなどを見据えて行われているかは不明だが、今後のYouTuberのコンテンツの展開を予想するうえで参考になる。これからYouTuberの動画は次のように分かれていくだろう。

  • Android TVなどを使って家族で見たり、互いに好きな動画を共有するのに適したもの
  • スマホやPCで一人だけで見るのに適したもの

家族単位で観れないコンテンツは淘汰はされないが、爆発的な再生数にはならない。逆に、家族で安心して見れるようなコンテンツが伸びると思われる。 そして、YouTuberが作成するコンテンツの質も、この意図せぬお茶の間進出の結果として、より家族という単位を意識したものに洗練されていく。

そこでは「牛乳風呂にはいってみた」とか「ミントスをコーラに入れてみた」的な動画は「食べ物を粗末にするな」という文脈の中でお茶の間からは排除されるだろう。このAndroid TVという新たなトラフィックの獲得を少しでも検討するYouTuberは、自ずと作成する動画の質もそういった方面に向かうのだ。

すなわち、より多くの再生数、そしてより多くの注目を集めるために、家族でも見れるようなしっかりしたものを作る必要性が、今よりずっと強くなる。趣味で動画投稿をする分には今まで通りでよいだろうが、所謂動画で飯を食いたい系の人は、そういった圧力から逃れられなくなるのだ。

とはいえ、Android TVの普及以上に、スマホの普及の方が急速なので、今後も主たるトラフィックはスマホからのものになるだろう。従って、Android TVがYouTuberのコンテンツ作りに与える影響もそこまで大きくはならないかもしれない。そこは、Android TVがどこまで普及するかにかかっているといえる。

だが、例えば私のチャンネルは、再生数で見るとスマホやPCによるものが圧倒的に多いが、再生時間で見るとテレビからのものが一番長い。YouTubeはここのところ「再生数」より「再生時間」や「視聴者維持率」を重視する傾向にあるので、この点は見逃せない。すなわち、Android TVによる視聴者の獲得は、チャンネル全体の再生時間を引き上げてくれるのだ。それは、もしかするとYouTube内の検索SEOに影響を与えるかもしれず、見逃せない。

昨日ついに国内での発売が発表されたNexus Playerがどの程度流行するか、まずはそこをチェックしつつ、今後のYouTube事情を見ていきたいところだ。

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